脳の前頭葉は『意欲や発想力、感情のコントロール、そして思考のスイッチなどの機能を果たしていると考えられている』人間の脳の中で、いちばん早く老化が始まります。記憶力や体力と違って自覚しにくいのが特徴です。40代になると脳の記憶を司る海馬よりもMRIなどの画像を見ても前頭葉が縮んでいくのがわかるようです。前頭葉が老化すれば、意欲が衰え、創造力も落ち、感情のコントロールも効かなくなり、他者との異なる会話を受け入れることが出来なくなる「偏屈者」になってしまいます。
たとえば、人間の言語の理解は側頭葉という場が司っています。このため、左の側頭葉ように脳梗塞などが起きると、失語症といって人の話が理解できなくなったりします。空間の認識や計算などの数学的な知能は、頭頂葉という場が司っています。ところが前頭葉の場合、特定の知的機能を司ってはいないようで、前頭葉の脳梗塞とか、脳腫瘍などがあっても知能テストの点数は落ちない。 理性のようなものを司るのではないかといわれる前頭葉は、実際動物の中で人間だけが非常に大きいです。
通常の会話や読書をしている際には前述のように側頭葉しか使わないし、計算やパズルの問題、ルーティンワークの際も前頭葉は使わない。ところが予測不能の事態に陥ったりしたときの「想定外の対応力」そういう際に前頭葉の能力が必要とされます。人間が動物と比べてこの手の事態に強いのは、前頭葉が発達しているおかげなんです
もう一つ、老化予防で重要な観点は「廃用」である。
若い人ならスキーで骨折して1カ月寝ていても翌日から平気で歩けるのに、年を取り風邪をこじらせて1カ月も寝たきり状態が続くと、かなりのリハビリをしないと歩けなくなってしまう。使わないと衰え方が若いころよりはるかにひどいのです。この使わなかった時の衰えのことを「廃用」といいます。もし40代から前頭葉が縮み始め、老化が少しずつ始まっても前頭葉を使い続けていれば、それなりに使い物になりますが使わないでいると「廃用」が進む可能性があります。
要するに、前頭葉をより良く使い続け「感情の老化」を防ぐには、「先の読めない不確実なこと」に対してポジティブに積極的な行動を生活様式に組み込み、クリエーティビティの自分が発揮できるようチャレンジし続けることが大事だということです。
脳の図bandainamcoentより出展 参考文献 和田秀樹『人は「感情」から老化する』より